「驚いたよ〜、突然水着買うの手伝ってなんて言われるから」


電話をかけた翌日。

電車に揺られながら隣に座る有紀が言う。


「彼氏でもできたの?」


その隣に座る友達の愛香も私をイジってくる。


「ちっ、違うよ!寮のみんなとプールに行きたいね〜ってなって…」


実際のところ、寮のみんなではなく、
ピンポイントで鈴屋君なんだけどね。と私は心で思う。


残念なことに、私は泳げなければプールに行ったこともない。

プールに行ったことがないのだから、
必然的に水着も所持していない。


初めての水着を1人で選ぶのは不安だから、こうして仲のいい有紀と愛香についてきてもらった。



「寮のみんなねぇ〜…。そういえばさ、あのコンクールの日、すみれと南條君が抱き合ってたって話がすごい話題になってるけど、どうなの?」


有紀が身を乗り出して聞いてくる。

実は、コンクールで抱きしめられた時、
周りには琉生君ファンクラブのみんながいたので見られてしまい、

もちろんの如く学校ですごい噂になった。
当然、私の元にも回ってきていた。


噂は怖いもので、どんどん盛られていく。

"南條と佐伯は付き合っている"

だとか。
そんなものも出始めた。