「ただのいとこなの、あたしたちは。男女の関係になったことなんて1度もないから。……勝手な想像はやめて」
冷静さを取り戻してはいたけれど、少し唇が震えていた。
声のトーンが乱れたのは、言葉の中に後ろめたさがあったからなのかもしれない。
でも、あたしは嘘をついていない。
あたしたちは本当に「ただのいとこ」でしかなかったから。
付き合ったり、カラダの関係になったこともない。
嘘をついているわけじゃないんだから、堂々としていればいい。
あたしはそう自分に言い聞かせていた。
しばらくの間、あたしと千草は沈黙の中にいた。
見透かすような目から逃げぬよう、あたしはつばを飲みながら、彼を睨み続ける。