ムッとしているあたしを見て、彼はくすくす笑いだした。
「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだよ」
コートのポケットに手を突っこんだまま、腰を少し曲げて、満面の笑みを見せてくる。
整った顔をクシャッと崩す、無邪気な彼。
いたずらを楽しむ子供のような姿を見ていると、本気になって怒っていることを馬鹿馬鹿しく思った。
落ち着きを取り戻そうと、あたしは深いため息をつく。
すると、彼はまた意地悪な発言をした。
「花ブーはそんな風に見たことはないんでしょ? でも、陽平ちゃんはどうなんだろうね。女として見たこともあるんじゃねぇかな? もしかしたら、花ブーをネタにして抜いたこともあるん……」
「無いって言ってんでしょ!!」