「じゃあ、行ってくるから」

黒いコートを羽織った陽平は、靴をはきながら振り返る。

「おじさんとおばさんによろしく伝えてね」

「わかった」

玄関まで見送っていたあたしは、彼が出ていった後、冷えた体を手でさすりながらリビングへ戻った。

「味、薄くね? この雑煮」

食べ終わった頃に起きてきた千草は、ブツブツ言いながらお椀の中を睨んでいる。

「嫌なら食べなきゃいいじゃん」

文句をつける彼を無視して、TVのチャンネルを変えていく。

元旦はどこのチャンネルも同じことをしているし、見たい番組なんて特にない。