「花、今日からこれ使って。常盤にも作るけど、こいつは同じ会社だから、そんなに急がないと思うし」

そう言って差し出されたのは、何もついていない家の鍵。

静かに受け取ったが、あたしはすぐに用意されたことで「この鍵は、誰かが使っていたものなんだろうな」と考えていた。

多分、これは前の奥さんが持っていたものだ。

「……ありがとう」

鍵をポケットに入れながら、にっこり微笑む。

一瞬でも嫌な気分になった自分をもみ消すかのように。