「……」

鏡に向かって笑顔を作る自分に呆れた。

「やっぱ違うやつにしよ」

赤いゴムを外して、引き出しの中から別のゴムを探す。

最近のあたしは、陽平に変な期待を抱くことが多い。

同じ家に住むことになって、毎日顔を合わせているから、昔に戻ったような気になっているんだ。

こうなることを恐れて、今まで距離を置いていたのに、関わるようになった瞬間、単純なあたしはすぐにあの出来事を忘れている。

ハンバーグを作ったあの日も、そんな自分に呆れてしまった。

陽平にとってあたしは、ただのいとこでしかないのに……。