机の端に置かれたのは、ブランド物のキーケースから外した1つの鍵。

「何か用事?」

「あぁ。これから部長と一緒に、基盤へ挨拶に行くことになった」

用件だけを俺に告げて、陽平はそそくさと出かける準備をする。

「ふーん」と言いながら鍵を受け取る俺は、すっかり元のペースを取り戻している陽平の姿に面白みを感じなかった。


来年の準備を済ませた俺は、タイムカードを押して会社を出ようとしていた。

「常盤さん!」

背後から、誰かが話しかけてきた。