翌朝、寝ている花を起こさずに、俺と陽平は家を出る。

今年最後の出勤日。

昨日のことを気にしていたのか、今朝の陽平は少しお喋りだった。

俺がまたあの話を持ち出すことを恐れていたのだろう。


会社の中ではいつもと変わらなかった。

集中力がない俺は、パソコンの画面に飽きる度、隣の陽平に話しかける。

真面目な陽平はこっちに振り向くこともなく、黙々と作業を済ませていく。


「常盤、今日は一緒に帰れないから渡しておく」

時計の針が5時を回ったとき、突然、陽平が話しかけてきた。