「あの、だから……何かあれば」
何も言わず、俺の顔をジッと見るだけの彼に、何か言わせたくて話を続けた。
だけど、おじさんは小さく「そうか」としか言わなかった。
ゆっくり視線を外して、家へと帰っていく彼。
残された俺は、胸に込み上げてくる虚しさを、すぐに信じることが出来なかった。
自分の娘の話なのに、まるで他人事を聞いているかのような顔。
言葉にされなくても、目を見るだけで「俺には関係のないことだ」という声が聞こえてくる。
実の娘なのに愛せない親、実の親から愛されない娘。
ずっと前から知っていたはずなのに、俺は初めて彼女の抱えている寂しさに触れた気がした。