「もう彼女を傷つけたりはしない」と。


いつしか、空に浮かぶ月は大半を黒い雲に覆われていた。

かすかな光に照らされながら、俺は実家へと向かっていく。

「陽くんか?」

突然、誰かに呼ばれた。

足を止めて振り返ると、背の高い男が近づいてくる。

俺は目を丸くした。

「……やっぱり。久しぶりだな」

話しかけてきたのは、仕事帰りの花の父親だった。