「待たせてごめんねぇ」

千草は人差し指で自分の鼻をクイッと上げて、嫌みったらしい口調で言ってくる。

「こんな格好でごめんねぇ!」

むかついたから、その顔を持っていた鞄で殴った。


「何、食べたい?」

殴られたところを手でさすりながら、歩き出す千草。

今日の彼は、気持ち悪いくらいにキャラクターが違う。

どうしてなのか気になるけれど、理由なんてどうでもいいかなって思った。

そのおかげで、とりあえず今日は笑って過ごせたのだから……。

「キャビア、フォアグラ、トリュフ」

「え……、三大珍味ですか?」

ケラケラ笑いながら、あたしは千草の後をついていく。