「面倒くさいから早く食べてしまおう」と思った俺は、皿の上に置いていた箸を持つ。

さっさとここから離れようと思っていたんだ。

でも、そのとき、彼女は顔を上げた。

「約束はちゃんと守ってね。次、疑ったりしたら罰金100円だよ」

鼻先まで真っ赤なくせに、彼女はわざとらしく声をあげながら笑いだす。

「これ、ちょっと濃いよね。ちゃんと味見すればよかったぁ」

残っている酢豚を全部、自分の皿に盛る彼女。

てっきり泣くものだと思っていた俺は、意外な姿に目を丸くした。