「言えないの?」

首を傾げて、口ごもる花を挑発する。

ゆっくり顔を上げた彼女は、返す言葉を考えているようだった。

「……言えばわかってくれるの?」

「うん。そこまでしてくれるんだったら絶対に疑わない。誓うよ」

花は渋々、OKの返事を出した。

……無理をしている顔。

テキパキとチラシを片付けてはいるけれど、落ち着きのない動きからして、動揺しているのが見え見えだ。

「陽平ちゃん、早く帰ってこねぇかなぁ」

台所に立つ花の耳に届くよう、大きな声で独り言をいう。

俺は鼻歌を歌いながら、そのときを楽しみに待っていた。