「ベビーカステラを買おう」と言ってくる彼女にうんと頷く。
俺たちはその後、真っ直ぐ家へ帰った。
さっきの冷めた態度は夢だったのかと思うくらい、彼女は朗らかな笑顔を見せてくる。
そんな彼女が怖くて、俺は自然に振る舞えていなかったと思う。
「おかえりぃ! 花ブー、飯作って。腹減ったよ、俺!」
玄関のドアを開けると、鍵の音で気づいていたのか、腹に手を置く常盤が待ち構えていた。
「雑煮、残ってるでしょ?」
面倒くさそうな顔をして、口を尖らせる花。
「飽きた!! 飽きた飽きた飽きた!!」
バタバタと足踏みをして、彼は駄々をこねる。