花はムキになっている俺を、うっとうしそうな目で見た。

「あたしたち、もう21だよ? キスなんて初めてじゃないし。別にどうってことないよ」

小馬鹿にしたような笑い方。

そのツンとした態度は、完全に俺の知らない女の姿だった。

一瞬、頭の中で「花ってこんな奴だったっけ?」と考えてしまった。

……ううん、違う。花は絶対にこんな女じゃない。

俺の知ってる「松浦 花」は、ちょっとしたことでも眠れないほど悩んでしまったり、友達の前では明るくて活発な女の子を演じているけれど、本当は泣き虫で打たれ弱い女の子だ。