こんな人の多いところで泣かれては困る。
傍から見れば、一緒にいる俺が泣かせているみたいになるから。
「えっと、ほ……ほら、あの木にくくりつければいい話じゃん! 元気出せよ!」
彼女の背中をポンと叩いて、人だかりになっているところを指差す。
「悪い運気が出た場合はさ、あんな風にすればいいらしいよ。木の生命力にあやかって、願い事が結ばれるようにするんだってさ」
親父から聞いた話をしながら、花を境内の樹木へと連れていった。
背伸びをしながら、彼女は木にすがるような表情で、細く織ったくじを枝にくくりつける。