「紗綾ってさ、好きな奴とかいないの?」

「え?」

ドキッとした。
だって好きな人って今はいないと思ってるけど、この無意識な行動は考えたらまるで優馬を好きみたい。

「い、いない。」

「ふーん。あんまり恋愛興味ない感じ?」

「興味ないわけじゃないよ。ただ好きじゃない人と付き合うのは嫌だし、時間の無駄な感じがするから。」

「時間の無駄ねえ。楽だし楽しいとは思わないの?」

優馬のような付き合い方が楽だと思う人がいるのは分かっているが、それを自分ができるとは思わない。
気持ちがついていかないだろうし、気持ちのない付き合いは苦手だ。

「そういうのは私は苦手。ていうかその話さっきもしたよね。」

「ごめん。俺さ、中学3年のときすげえ好きな人いたの。」

そこで止めて持っているお茶をじっと見ている。
思い出しているのだろう。
優馬にとって辛い出来事を。