「もういい、なんでもないから!送ってくれてありがとう。じゃあね!」

早口でまくし立ててアパートの階段を登ろうとすると、急に腕を掴まれた。

「あー待て。ごめん。びっくりしたから。喉乾いたからお茶くれるか?」

黙って頷いて部屋に案内する。
こんなの私じゃないのは分かってる。
でも無意識に行動してしまうのだから仕方がない。

「どーぞ。」

「さんきゅ。予想通り綺麗な部屋だなー。片付いてる。」

「ちょっとあんまり見ないでよ。」

部屋に上がりお茶を出すと、優馬はそれを飲みながら部屋を見回している。
見られて困るものはないけど、そもそも見られるのが恥ずかしい。

綺麗だと言われたからまだいいが、それでも掃除が行き届いているわけではないので見られたら汚れとかあるかもしれない。