お互いそのくらい分かっていたはずなのに何も言わず黙って歩く。
アパートの前まで着いた。
なんて言えばいいんだろう。
このままじゃ優馬は帰れないのは分かってる。
「あがる?」
顔を見れずに下を向きながら呟いた。
少しの沈黙の後優馬が「いいの?」と私の顔をしっかり見る。
「うん…。」
部屋のドアを開けると小さな声で「おじゃまします。」と優馬が入ってくる。
部屋は物が少ないせいでとりあえず片付いていてあげても平気な状態で安心した。
「なんか可愛らしい部屋だな。」
部屋中をキョロキョロしながら優馬がカーペットの上に座る。
私はお茶を出すと優馬の前に座る。
「そんなに見ないでいいから!」
「えー?紗綾って実は可愛いもん好きだよなー。」
知ってたなんて思わなかった。
そういうのは愛梨の方が似合うから言ったことも、可愛いものを付けたりはしていないのに。