「やっぱりまだ帰ってなかったんだね」




そう言いながら自分の教室の鍵を開けるのは、いつも通りの優也くん。

中へと足を進め、机の上に腰掛けてふわりと微笑むのも、私が好きだった優也くん。


ーー演じられた、偽物の " 優也くん " 。




「待ってて本当に良かった」




そんな君に抱く感情は、この短時間の間に変わってしまった。

あんな淡くて儚い、愛おしい気持ちはどこに捨ててしまったんだろうと思うほど、憎くてたまらない。


……泣き叫んで、殴ってやりたい。


さっきまではショックと悲しみの方が大きかったはずなのに、いざ君を目の前にするとダメだね。

怒りの方が、強いみたい。


君の本当の気持ちに気付かないフリをしてた。

それでも幸せだと思い込んだ。

いや、幸せなことは沢山あった。


優也くんが笑ってくれるだけで、私は幸せを感じられた。


……なのに、全部全部、嘘だったんでしょう?