部活動中の時間だから、人気のない廊下。
追いかけてくる悲しみから逃げるように、ひたすら走った。
下足箱まで辿り着いて、足を止める。
肩で息をしながら、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「……もう、やだ」
何なの、本当に。
今まで目を背けてきたことが、一斉に私に降りかかってきた。
こんなことある?
ただ、前に進みたかっただけ。
変わりたかった。変えたかった。
なのに、どうして、こんなに後悔しなきゃいけないの?
こんな、私の今まで丸ごと否定されるようなことにならなきゃいけないの?
「ーーやだって、何が?」
とても、穏やかな声がした。
愛おしくてたまらない……いや、たまらなかったはずの声がした。
「な、何で……っ」
「話すって約束したでしょ、さっちゃん」
慌てて声がした下足箱の向こう側へと走ると、やっぱりそこには、柔らかな笑みを浮かべる優也くんがいた。