「ねえ、美沙ちゃん。一体、どんな気分?」
優也くんが図書室から出て行って、どれくらい経っただろう。
軽快な足音が近づいて来て、楽しげな声が降ってきた。
悔しくて仕方がなくて、泣いてるのを少しでも隠そうとバレないように目を擦る。
「あぁ、やっぱりって感じかな」
声が震えないようにお姉ちゃんの目は見ずに、口を開いた。
「でもまあ、お姉ちゃんも優也くんも想像以上に最低だと思ったよ」
気丈に振る舞う。
今にも壊れそうな自分自身を、強がりで塗り固めて、必死で平然を装う。
どんな気分、なんて。
お姉ちゃんは私がどんな顔をして、何を言うことを望んでるの。
泣き叫べばいい?
取り乱して、掴みかかって、行き場のない感情をぶつければ良いの?
ーーなら、お望み通り、そうしてあげる。
「……ふふっ」
立ち上がってほとんど変わらない高さにある顔を睨みつけると、やっぱりお姉ちゃんは楽しそうに笑った。