「何度も言わせないで、優也は好みじゃないの。……違う、私を好きな優也なんて興味がない」
「相変わらず変な趣味してるよね。まあ、いいや、僕はさっちゃん探すから」
もうお姉ちゃんの言葉の意味を考える気すら起きなかった。
優也くんは私が好きじゃないし、好きになることもない。
そして、お姉ちゃんも優也くんを好きじゃないし、好きになることもない。
これだけは、働かない頭でも何とか理解出来た。
「この時間なら帰ってるでしょ、じゃあね」
「あー、やっぱりそうだよね。なら僕もかーえろ」
優也くんとお姉ちゃんの会話。
再び大きな音を立てて閉まるドア。
遠くなっていく足音。
それらをただぼんやりと聞きながら、窓から差し込むオレンジの眩しさに目を細めれば、頬をそっと一筋の涙が伝った。
この瞬間、私の中で何かが終わった気がした。