「……辛そうなのは、天谷も同じでしょ」
きっと今の私たち、似たような顔をしてると思うの。
ね、そうでしょ、天谷。
「……チッ、」
小さな舌打ちと共に、体にかかっていた重みが消えた。
私の上から退いた天谷はさっきまで座っていたベッドに戻り、再び腰掛けた。
「バカみてぇ……」
虚しく響いたその一言は、自分自身に向けたものか、それとも私へのものなのか、分からなかった。
でも多分、どっちともバカなんだと思う。
保健室に連れて行くと行って教室を出てきた天谷は教室に戻った方が良いに決まってる。
だけど、私と同じように目を赤くした天谷に、そんなこと言えなかった。
結局、授業を終えるチャイムが鳴るまで、私たちが口を開くことはなかった。
もうすぐ高校生活、初めての冬休み。
窓の外では風に吹かれて葉が散っていた。
あんな風に、私の恋心も簡単に散ってしまえたら、もっと楽に生きられるのにね。