その日以来、家族は崩壊寸前だった。
仲が悪くなったわけではない。
お父さんは、四六時中働いて、あまり帰ってこない。
まるで思い出さないようにしてるように。
お母さんは、あれから精神的に病み、入院中だ。
そして私は…感情を無くした。
どんなに面白い番組を観ても、笑わない。
たとえ痛いことがあっても泣かない。
もう、何も感じないの。私は、
私は、感情を捨てたのだから。
こんな辛い思い、もうしたくない。
だったら感情を捨ててしまえばいい。
お姉ちゃんは暴行にあっていた。そして死んだ。
犯人はすぐに捕まった。お姉ちゃんの体内から精子見つかったから。
でも犯人は未成年ということで重い罪にならなかった。
それでも私は、犯人の名前を一生忘れないでしょう。
風見祐也
私は感情を捨てた。
もう何も感じない。
でも、でもね、犯人を憎む気持ちだけは忘れてない。
忘れることができなかった。忘れちゃいけないんだ。
お姉ちゃんのためにも。
この犯人を、風見祐也を、一生、生き続ける限り、
恨み、憎しむことが私の役目だと思うから。
これからも。そう、ずっとずっと、この気持ちは忘れない。