最終下校時間を過ぎて、学校を出る頃には既に陽は沈んでいた。

正門を出たあとはそのままお互い別方向へと帰るはずが、突然隼人が立ち止まって私を見る。


「家まで送る」

「え…?」

「別にいいだろ。…今日は誰も見てねーんだし」


どこかわざとらしくそっぽを向きながら、隼人が呟く。

その言葉で、前に一度だけ隼人と一緒に帰った日の放課後を思い出した。


気がつけばこんな時間まで学校に残っていた生徒も私たちくらいなのか、周囲には誰もいない。


「うん…。けどもうこんな時間だし、隼人の迷惑じゃ…」

「迷惑じゃねーよ。そんなこと」

「……」

「んな事より、そんな泣きっ面した栗原を一人で帰らせられるかっつーの…」


あ……


隼人に言われて、私は自分で自分のまぶたに手をやる。


…あのあと、ひたすら隼人の前で泣き続けたせいか
すっかり目は腫れ、どことなく表情も落ち込んでしまっていた。


こんな気持ちのまま
家までの暗い夜道を一人で帰るのは何だか心細くて


隼人の言葉に私はコク、と素直に頷いた。