……どれくらいの間、こうしていたんだろうか。


気がつくと窓の外はうっすら暗くなり始めていて。




それでも床に茫然と座りこんだきり、動けないでいると


どこからか誰かの走ってくる足音がして



ふと顔を上げると、目の前に隼人が立っていた。




「栗原!何やってんだよ!?部活とっくに終わってるし、橋本たちが心配して……」

「……隼人。私、頭おかしいのかも」

「は…?」


俯くなり、

ポツリとそんなことを口にした私に、隼人のしかめるような声がする。




「……」


広瀬先輩が加奈子さんにどんな言葉を投げたのかは分からない。

それでも加奈子さんの目に浮かんでいた大粒の涙が、すべてを物語っていて。


隼人の言っていたことは、事実だった。



普通ならこれで先輩への気持ちも冷めるはず。



それなのに。

あの日見てしまった、今にも胸が締め付けられるような先輩の切ない表情が忘れられなくて……




今でもまだ、こんなに好きで。


例え傷つけられても

それでも先輩の目に映る加奈子さんが羨ましい。

加奈子さんになりたい、と思うなんて……。



「っく、うぅ………」




とっさに顔を両手で覆うと


隼人の見ている前で私は、声をあげて泣いた。