このとき、とっさに隼人の言っていた言葉が脳裏をかすめる。



“広瀬先輩は、やめとけよ”




うそだ、うそだよ


誰か嘘だと言って……



ガクガクと震えだす膝を抑えられないまま

誰かに祈るような思いで、加奈子さんが飛び出してきた教室へと近づき、中を覗き込む。



「……」




でもそこで私が見てしまったのは他の誰でもない
教室で一人背を向けたまま立ち尽くす…広瀬先輩の姿で。


ショックを受けた私は、とっさに後ずさりすると、先輩に気づかれないよう小走りでその場をあとにした。




無我夢中で自分のクラスの廊下まで駆けてきた所で
私は唐突に立ち止まると、壁に持たれかかる。


そしてそのまま崩れ落ちるように床へしゃがみ込んだ。



「……」



そんな……

どうして?先輩……


信じたくない

信じたくないのに



“見たんだ。広瀬先輩がクラスの女子に冷たく当たってるところを。
それも、いじめに近いような”



隼人の言っていたことは本当だったの……?