午前の授業は、なぜだかほとんど身に力が入らなかった。

まるでぽっかり何かが抜けたように、
私の目線は黒板ではなく、斜め前の席にいる隼人の背中で止まったまま…。



“ほんとほんと。まじでそんだけ。だよな?栗原”



あのとき隼人は、私を――かばってくれたんだと思った。

理由は多分私が昨日の朝、隼人と一緒に教室に向かうのをためらったから。



“私と隼人が遅れて一緒に教室でも入ったりしたらさ、皆に誤解されるかもしれないじゃん…!”





私がそんなことを一人考え込んでいる間も、

まるで何事もなかったように、頬杖をつきながら黒板の内容をノートに書き写してる隼人。


私はそんな隼人から目をそらすと、フイとそっぽを向いた。



「………」



ズキ……


“別に栗原とは何もねーし、昨日はたまたまアイツの弟が迷子で困ってたから、俺がついでに付き添ってやっただけだよ”



…変なの。

私だって隼人と同じことを言おうと思ってたのに。


いざ皆の前で隼人に否定されたとき


どうしてか胸が…苦しくなった。