その日の晩、私は膝に固定されたギプスを取り外していた。
そしてゆっくり椅子から立ち上がると、恐る恐る足を前に動かしてみる。
「優衣姉ちゃん!いつもの棒は使わなくていいの?」
壁に掴まったまま、どこか頼りなさげな私を心配に思ったのか、タタタっと駆け寄ってきてくれたのは――弟の優太。
早いもので、ついこの間まで幼稚園に通っていたはずの優太も、今年の四月で小学校へと上がった。
まるでビー玉のような澄んだ瞳で見上げてくる優太に、私はニコッと笑い返す。
「うん。そろそろこの棒なしで歩くから、今日はその練習」
「そうなの?たいへんだったら言ってね?」
この年齢にして、もうこんな気遣いが出来るなんて…
自分の弟だから、少々ひいき目で見てしまうのかもしれないけど
将来はとても頼もしい男子へと変わる気がする。