これで、良いんだ。

これで…


だってこのままの関係でいたら、隼人にとって私はずっと妹のような存在で…



だから強くならないと。

周りの助けを借りなくてもいい、自立した芯のある大人に。


そしてもう一度また、隼人に彼女として見てもらえるようになったら…







自分で自分に何度もそう言い聞かせながら、気がつくと私は勉強机に向かっていた。


勉強なんて本当はとてもやれる気分じゃないのに、意に逆らってかペンを握る手は問題を解き進めていく。



あの優衣が生まれ変わったって

親はびっくりしていたけど…


本当に生まれ変わってしまうくらいのつもりでやらなきゃ。



運動会が終わって、今度はもうすぐ中間試験。

今までにないくらいの良い点数取って、隼人に追いつくんだ。




(…もしかして隼人も、こんな気持ちだったのかな)




私にフラれたとき……



「……」



その瞬間、ポタッという音がして、ある文字を濡らした。


隼人に指摘されたきり、直しそびれていたlove(ラブ)のスペル。



この間も目からは雫がポタポタとこぼれて


透明の涙で滲んで、溶けたその文字はすっかりもう読めなくなってしまった。






これで良かったんだよね?


……本当にこれで良かったのかな





「っ、ごめん、ごめんね、隼人……」





思わず机に顔を伏せた私は、一晩中泣きじゃくった。