「わ、わり…つい」

「うっ、ううん」

「……」

「あの腕、つかまってもいい…?」


こうしている間も混雑する人の波に押されそうで
はぐれないよう自分からくっついてもいいか聞いた私に隼人がこう答えた。


「…腕よりこっちのがいいかも」


ちょっとだけ上の方を見ながら、隼人がさりげなく差し出してくれたのは手。

そのままギュッと握り合わさった手に、私は顔を上げる。


「嫌だったらごめん。けどこれなら優衣がもし手を離しかけても、すぐに俺が掴まえられっから」

「……」

「…だめ?」


返事のない私を不安に思ったのか、チラ…と目を向けてきた隼人。


…手はこんなに広くて大きいのに、ちっちゃな子供みたい。

そんな隼人が可愛くていとおしくて、私はとびきりの笑顔を見せて笑った。


「ううん、だめじゃないよ」

「……」

「ずっと手、繋いでてね!」


なんか不思議…

あんなに遠く離れていたはずの隼人が、今はすぐ近くに感じられる。