「……」


突然のことに頭が追い付かない。


抱き寄せられたまま固まる私を、通りすがりの人たちが一斉に見てくる。


でもそんなことはお構いなしとでも言うように、隼人が背中に回していた腕をギュッと強めてきた。



「まじで本当、すげー心配した…」

「……」

「電話も繋がんねーし、優衣に何かあったんじゃねーかって俺…」



そう話す隼人の服はひどく汗だくで、きっとそこら中探し回らせてしまったんだと思った。


申し訳なさから私は体を縮こませる。



「ご、ごめんなさい…。実は充電切れてて…」

「……」

「み、皆は?」



隼人が探しにきてくれたおかげで安心したものの、やっぱりユカリ達がいない。

皆はどこにいるのだろう?


つい気になってかキョロキョロと周囲を見回す私に、隼人がようやく腕の力を緩めてくれた。



「皆なら今、賽銭の列に並んでもらってる。俺だけ優衣を探しに来たんだ。橋本たちも心配してる」

「……」

「おかしいと思ったんだ。藤原に問いただしたら、優衣だけ先帰ったっつーから…」



藤原さん……


このとき、藤原さん達から言われた言葉を思い出した。



“もう帰ってくんじゃねーよ”



すると忘れかけていたはずの傷がズキ…と痛み出してか、思わず足をひねった私に隼人がふと絆創膏に気がつく。



「優衣…もしかして足ケガしたのか?」

「え?…あ、これはちょっと靴擦れしちゃって」

「……」

「でもちゃんと歩けるし平気だよ。それより早く皆のとこ戻らないと」



ずっと楽しみにしていた夏祭り、また余計な心配をさせて台無しになんかしたくなかった。


とっさにごまかした私は隼人から離れる。

そして皆の元へと急ごうとする私の腕を、寸前で隼人が掴んできた。



「…いいよ戻んなくて。俺らだけで祭り回ろ」



突然引き止めてきたかと思うと今度はらしくないことを言い出した隼人に、私は目を丸くする。



「えっ?なんで…それに皆には…」

「俺から連絡しておく。俺と優衣はあとから合流するって」

「……」

「…いいだろ、そんくらい」


ふざけているわけではないのか、真剣な眼差しを向けてくる隼人。

気がつくと、さっきまでの足の痛みは消え去っていて。

隼人の言葉に、私はコク…と頷いていた。


「……うん」