その日を密かに心待ちにしたまま

中学校生活最後の夏休みがスタートした。


この約一ヶ月間、受験勉強はもちろんの事
気になった高校の見学にも何度か足を運んだ。

中でもマヤさんが通っていたという東高は都内ののどかな場所にあり、学校の雰囲気も一目見てすぐ気に入ってしまった。

校内を見て回る間、私以外にもたくさんの知らない他校の中学生がいたけど、
そんなことは気にもならないくらいこの時にはもう既に決意は固まっていたんだと思う。


説明会を終えて帰る途中、校庭では仲間たちと競い合っては笑い合う部活動生らを見かけて…


来年の春には、自分も絶対ここに通う。
そのために頑張ると。

心の底から強くそう思った。



8月中旬。

今年もサッカー部は予選を通過し、全国大会への出場が決まったという。

隼人たち、きっと今ごろバスの中なんじゃないかな。

遠く離れてしまうのはやっぱり寂しいけど中学最後の大会だから、私も大人しく応援しようと思う。


ちなみに台風は今月の29日に来る予定らしい。

始めは30日の予報だったものの、なぜか急に進路が変わったのか一日早まったそう。

もちろん晴れたら嬉しいけど
今となっては行けても行けなくても、どちらでもいいとさえ思った。


そうして巡ってきたお祭りの日の前夜。

外では雨風の音がしだいに強まっていく中、勉強にも集中できないので潔く眠ることにした。

つけっぱなしにしていたテレビも電源を消す。




数時間後。

ふいに目を覚ました私はハッと起き上がると、急いで窓をこじ開ける。

このとき部屋に入り込んできたのは、朝の眩しい日差しと、涼しげな風。


「……」


いつの間にか台風は――過ぎ去っていた。