えっ……


聞き逃せないそのワードに、私の心臓がドキッと反応する。

視線の先では、藤原さんに誘われて、自身の通知表からようやく目を離した様子の隼人。


「え、祭り?」

「そ!去年、台風で流れたやつ。今年も30日にやるって」

「……」

「隼人ってば、ここんとこ勉強ばっかでしょ?夏休みくらい遊ぼうよ。ね?」


と、藤原さんがやや強引な様子で隼人らサッカー部を誘い出そうとする。

そんな藤原さんを前に、隼人はきっぱりとこう告げた。


「悪いけど、その日は部活の大会があるから」

「もー隼人。なんでそんなマジメになっちゃったの?お祭りなんて夜がメインなんだからさ、別に大会終わってこっち戻ってきてからでもいいじゃん」

「……」


引かない藤原さんに、隼人は少しの間黙りこんでいたものの、しばらくしてこう口を開いた。


「んじゃ夕方でいいなら。その代わり他にも声かけっけど、いい?」

「え、いいけど…」

「わかった。それなら行く」


そう言って隼人は皆のいる場所から頭ひとつ分、身を乗り出してきたかと思うと、こう呼んだ。


「優衣」