「まじだ、すげぇ」

「俺、5しかない通知表初めて見たんだけど」

「隼人なら西高も余裕だな」

「むしろトップで入れんじゃね?」


その話題にハッとして顔をあげると、どうやら1学期の成績が全て絶対評価5だったらしく、仲間から注目を浴びている様子の隼人。

今の時点で、既にもうゴールは見えているんじゃないかと思えるほどなのに
それでも隼人は立ち止まるつもりはないのか、笑い混じりにこう言っていた。


「…けど、まだまだ頑張らねーと」


同じ教室にいるのに、隼人がずっと遠い場所にいるような気がして……

内心複雑な思いでその騒ぎを遠目ごしに見ていると、そんな私の気持ちをユカリが代弁するかのようにこう言う。


「隼人ってさ、ほんと変わったよね。1年の頃と別人みたい」

「……」


ユカリの何気ない発言に、私は持っていた自分の通知表をそっと丸めこんだ。


“俺、今度は1位狙ってっから”


こないだ行われたばかりの期末試験。


その宣言通り、隼人はとうとう学年1位を獲っていた。


正直、隼人はあまり順位とかにこだわらないタイプだと思っていたのに、実は案外そうじゃないのだろうか。

むしろ隼人が変わってしまっただけ?


何のために…

自分のため?


それとも……


「あ、隼人いた!」


そんな自問自答を繰り返していたところに、あの藤原さん一味がそろって隼人たちの元へと駆け寄る。

そして、教室中に響き渡る声でこう言った。


「ねぇ夏休み、うちらでお祭り行かない?!」