「やっぱりー!優衣ちゃんだ!どおりで見た事ある子だなぁって思った~!」

「?」


――!!


名前を呼ばれた事に驚いて顔を上げると、そこにはなんと隼人のお姉さんであるマヤさんがいた。


な、なぜ隼人のお姉さんがここに!?


一瞬パニックになりながらも

よくよく見てみるとここの店員さんなのか
レジの横に立つマヤさんは、身に着けた黒いエプロンに『神崎』と書かれたネームプレートをぶら下げている。


今まで何度もこの書店には足を運んでいたのに何で気付かなかったんだろう。


そんな事を思いながらも、「は!まずはお会計…」と、我に戻ってか急いでカバンからお財布を取り出す。

でもこの時、中を覗きこんでハッとした。


そしてすぐさま、キャッシャー台から持ってきた参考書を引き戻そうとする。


「…あの、やっぱりこれ買うのやめます」

「え?」


レジへと持ってくるなり今度は止めると言い出した私の言動に、当然ポカンとした様子のマヤさん。


私は周囲の目を気にするように辺りを見回したあと、顔を真っ赤にしてこう言った。



「て、手持ちのお金が、足りませんでした…」