「今日で卒業だな。広瀬先輩も」

「……」


まるで呟くような隼人の言葉に、私は黙って頷いていた。

そしてまっすぐ隼人を見上げる。


「あのね隼人。私、今日卒業式が終わったら…広瀬先輩に告白する」

「……」

「断られるのは分かってる。でもこの気持ちだけはちゃんと直接本人に言いたい」


二年もずっと言えずにいた恋だから、最後くらい桜の花びらのように散って舞いたい。


「…そっか」


決意の表明にもとれる私の言葉に、隼人はただ柔らかく頷いてくれた。


「もし優衣が告って先輩と付き合うことになっても、俺は応援するから」

「……」

「優衣らしく行けば何とかなる」


先輩が私と付き合うなんてそんなの…
天と地がひっくり返ってもありえないけど

隼人に励まされてか、また泣いてしまいそうになる。


口を固く結んで必死に涙をこらえていたら、隼人がふいに私の後ろを指差した。


「お、広瀬先輩」

「え!?」

「はい、うっそ~」


わざとらしく舌を出してからかってきた隼人に、私は怒りの鉄拳をくらわした(交わされたけど)


…でもなんか凄く、久しぶりだ。

隼人とこういうやり取りするの。


「…と、隼人」

「ん?なにか言ったか?」

「ううん、何でもない」



ありがとう、隼人。



そして、ごめんね………