「……っ」

「え、図星?てかなんで元カノがここに居るの?隼人に何の用?」

「おい藤原…やめろよ」


事実を言い当てられたせいか、思わず顔が引きつる。

そのまま表情が強ばっていく私を前に、止めに入ろうとする隼人。

でも藤原さんは勢いを止めることなく、どこか呆れるような目で私を見た。


「それにしてもほんと…見る目ないよね、元カノさん。大事にしてもらってたんでしょ?」

「……」

「そっちから振っといて今さら惜しくなったとか止めてよね。隼人は私のだから」



気付くと、私は逃げるようにその場から走り出していた。



「優衣!」



後ろで隼人の呼ぶ声が聞こえたけど、振り返れなかった。







その日の晩。


私は部屋で一人、抱きあげたテディベアをぼんやりと見ていた。

しばらくの間黙って見つめていたあと、別れを惜しむようにソッと頭を撫でる。


「…こんな所にしまってごめんね」


そう呟いて、最初に入っていた透明ケースの中に戻し入れると、箱ごとクローゼットの奥の見えない場所へとしまいこんだ。


そのまま逃げるようにして布団に潜り込む。



(……眠れない)


一人で眠るのは久々だったせいか、この夜はほとんど寝付けなかった。


毎晩抱きしめたときに感じていた温もりが、今日はなかった。