ガヤガヤと店内での騒ぎ声が遠くで聞こえてくる中

誰もいない女子トイレの洗面台では、蛇口の水の流れる音だけが響く。


「……」



“だったら私と付き合おうよ隼人。今、彼女と別れてフリーなんでしょ?”



…私、なんて自分勝手なんだろう。

広瀬先輩のこと吹っ切れられなくて別れを告げたのは自分なのに、隼人が他の子と居るのを見て嫌だと思ってしまった。


(さっきの子…可愛かったな。もしかして本当に付き合っちゃうのかな)


自分のことは棚にあげ不安に駆られそうになっていたとき、ポケットに入れていたスマホが振動した。



“優衣、大丈夫?今そっち行こうか?”



慌てて画面をタッチしてみると、ユカリとみーちゃんからラインが来ていた。

私は急いで返信する。



“心配かけてごめん、もうそっち戻るから平気”



(気を取りなおそう)



そう思ってトイレのドアを開けて出たとき、廊下に隼人がいた。