「そのとき思ったの。私、やっぱりちゃんと先輩に好きって言いたいって…」

「!? は?なんで…大体、いまさら先輩のどこがいいんだよ?先輩が優衣のために何かしてやったことなんてあったか?
それに告ったところで先輩には」

「告白しても無理なのは分かってる。ただの押し付けにしかなんないことも。でもやっぱり私、後悔したくないよ……!」


一度だけ、先輩に告白すると決めた冬の日。


私に勇気がなかったせいで
結局、一言も伝えられなくて

フラれることすら出来なくて。


ずっとしまいこんでいたこの想いは、宙ぶらりのまま行き場をなくして苦しかった。


来年の春になれば

先輩は中学を卒業して、きっともう二度と会えない。

だから……



「急にこんな勝手な事言ってごめん、隼人……」

「……」


このとき、私はまだまだ子供で
大人になんかなれなくて


たった今、すぐ目の前にいる大切な存在にも気づけずに

ただ自分の心を満たしたいだけの

ただ自分が満足したいがためだけに、今の幸せから手を離すことを選んだんだ。


「私、隼人と別れたい…」




台風の風が吹き荒れる8月。




この夜


私と隼人は――別れてしまった。