『高速道が封鎖されてっから、あぶねーけど下道おりて帰るって。だからいつそっち着けるか分かんねーかも。ごめん…』


時計の針が夜の7時を過ぎた頃、隼人からは案の定「遅くなる」とラインが来ていた。


隼人に言われた通り家で待つことにした私は、部屋のベッドに座り込んだまま返信を打つ。


『分かった気をつけてね。あと、優勝おめでとう』

『え、なんで知ってんの?』


隼人からすぐラインが返ってきたのは気づいたけど、あえて見なかったことにした。

光ったままの画面から目を伏せるように、持っていたスマホを裏返しにして寝かせると、リモコンでテレビの電源をつけてみた。



『台風16号ですが、現在首都圏内が暴風域に入り――』



耳を塞ごうとしても聞こえてくる、窓を叩き付ける雨風の音。

ほんの数秒、嵐が止んだと思えば今度はバケツで水をひっくりかえしたような激しい豪雨の繰り返しで……


(こんなんじゃもうお祭りどころなんかじゃないよね……)


そんなことを思う今も窓の隙間からは台風の風が入り込んできて
その音に怯えるように、ぎゅっと目を押し瞑った。