それはあっという間の出来事だった。


相手チームからボールを、いともたやすく奪い去っていく先輩。


そしてこうなる事がまるで最初から決められていたかのように

先輩がシュートしてみせたその、たった1個の丸いサッカーボールは

まっすぐ横一直線上を貫いて、対戦チームのゴールネットを突き動かした。




先輩がシュートを決めたのと同時に試合終了を知らせるホイッスルが鳴り響く。

テレビ越しからでも聞こえる大きな歓声。

結果は3ー2で、うちの学校チームの優勝が決まった。


すばらしい試合でしたねと、解説の人が絶賛している。



大いに盛り上がっている会場のムードとは真逆に
私は一人静まり返った部屋で座りこむ。


さっきまで抱きしめていたはずのテディベアは、いつのまにか手から離れていた。



「……」



広瀬先輩……