『とにかくこっちは平気だから』

『……』

『んなことより優衣の方こそ、明日は外に出たりしねーでちゃんと家で待ってろよ?』


4月に比べて、だいぶ男の人の声色に変わってきた隼人。

今度は大人みたいなことを言って私を説得しようとする隼人に対し


『うん、分かったよ…』


と、相変わらず上がらないトーンのまま渋々返事をした。



『じゃあ俺は試合に備えて今日はもう寝るから。また明日な』

『うん、おやすみなさい。決勝頑張ってね』


最後まで笑顔になれないまま、通話を切った。



「……明日のお祭りは中止かなぁ」


鏡に映った華やかな自分の格好とは裏腹に

あ~ぁ、と言わんばかりの深いため息をつく。


せっかく練習のために前もって着てみた浴衣姿の自分も、今は何だか虚しく見える。



「でもまだ分かんないよね。ギリギリまで天の神様にお願いしておこう…(神社だけに)」


参拝の意味も込めて、1日早いけどこの場所から手を合わせてみた。



「……」


明日は絶対、隼人とお祭りに行けますように…