そのとき

ワァッと歓声が沸いた。


振り向いた私の目に、ーー広瀬先輩が映る。



「ーーー」



正直、見間違いだと思った。



8月、三年生はとっくに引退して、もうここには居ないはずだと思っていたから。


でも、今私が見ているその人は

他でもない、広瀬先輩で……



「せんぱい……広瀬先輩」



思わず、名前を口にしていた。


でもその声はすぐに声援で掻き消され



たった今

先輩がシュートを決めたボールのように



風に揺れるゴールネットの奥へと


吸い込まれていった。