「―――」

「って、何言ってんだ俺…」


一気に恥ずかしくなった様子の隼人が、私の肩に顔を押しつける。

しばらくうなだれていたあと、ゆっくりとその顔を離して正面に向きあった。


「けど、俺が一番欲しいのは栗原だから」

「……!」

「プレゼント何が欲しいか聞かれたとき、栗原に引かれると思って言えなかった」


目はそらしたまま、どこかぎこちなく話してくる隼人。

そんな隼人の手を、私はとっさにギュッと握ったんだ。


「隼人。私、そんなことで引かないよ…」

「……」


すると今度は隼人が私の手を、そっと掴んできた。

そのまま床に押し倒される。


「このまま襲っても?」

「っ?」

「今ここで栗原の服、脱がしたいっつっても引かないでくれんの?」



そう聞いて、私の胸元にあるボタンに触れてきた隼人。

このとき、ようやく隼人の言っている意味が理解できた私は顔を赤くする。



「ごめん、怖がらせて。けど俺、そんな出来たやつじゃねーから。
夜寝るときだって、栗原には絶対言えねーような妄想ばっかしてるし」

「……」

「キス以上のことだって、ほんとは興味あるし…」


そこまで言いかけてチラ…、と一瞬
隼人が、めくれあがっていた私のスカートに目をやる。

そしてもう一度私の顔を見下ろした。



「……だめ?」



付き合うって、――そういうことでもあるんだ。

その言葉の意味を、私はこの日初めて知った。

ただ仲良く手をつないだり、抱きしめあったり、キスをしたりするだけじゃ物足りないんだね。特に男の人は。



「……いいよ」


窓を打ち付けていく雨音の中。

声や背丈、心も大人になり始めていた隼人の顔はちょっとだけ…知らない男の人に見えた。








マンションから外に出ると、雨は止んでいて。


隼人に手を引かれるまま、夕焼け雲の下を私はどこか俯きがちに歩いていく。


時折、すれちがっていく見知らぬカップルを、今までとは違った気持ちで見つめながら……


家の前まで送ってもらったところで

私と隼人はお互い向かい合わせになる。