「…!」



周りが薄暗くてそんなによくわからないけれど、振り向いた拓海くんが怒っていることくらいはその声でだいたいわかる。

そんな拓海くんにあたしは少し身構えると、拓海くんが怒っている理由を瞬時に予想してみた。


…も、もしかして…直樹と二人だけで話してたのがいけなかったのかな?

え、でも…あたしと直樹はただの親友なのに。


あたしがそう思って拓海くんの言葉を待っていたら、その時拓海くんが低い声で言った。



「お前は…俺の彼女だろ?」

「そ、そう…だよ。うん、そうに決まってるじゃん」

「だったら何でさっき、アイツにあんなこと言わせるチャンスなんか与えたわけ?」



拓海くんはそう言うと、あたしの方に真っ直ぐに歩み寄る。

でもそんな拓海くんが怖いあたしは、思わずそんな彼から逃げるように後ずさりをしてしまって…。



「な、何?言ってる意味がわからないよ。あたし、直樹に何もチャンスなんか与えてないもん」

「……“直樹”、」

「!」



そして拓海くんはあたしのそれに反応すると、そっと直樹の名前を呟いた。

どうやら呼び捨てで呼ぶのが気にくわないらしい。


けど、



「し、仕方ないでしょ。ってか、あたしと直樹は親友なんだから」

「……そんなこと思ってんのは妃由だけだよ」

「…え?」