…直樹…?


だけど直樹が何かを言いかけたその時、突然それを遮るようにあたしは拓海くんに呼ばれた。



「妃由、」

「!」



拓海くんはあたしの名前を口にしながら、スタスタとあたしの傍にやって来る。



「…拓海くん」



向かいに立つ直樹のことを少し気にしながら拓海くんの方を振り向くと、その瞬間に不機嫌そうな顔をした彼と目が合う。

だけど拓海くんはその視線をすぐに直樹に移すと、あたしの手首から直樹の手を離して言った。



「…ごめん」

「…?」

「コイツ、ちょっと借りるね」

「!!え、ちょっ拓海くっ…」



拓海くんは直樹にそう言うと、次の瞬間、半ば強引にあたしの手首を掴んでスタスタとその場を離れて行く。

後ろの直樹はそんな拓海くんに何かを言うことはなく…一方のあたしは、突然の出来事にびっくりしつつも、何より拓海くんに掴まれている手首が痛い。



「た、拓海くん痛いっ…!」



そしてあたしがそう言っても拓海くんはすんなり離してくれることはなく、

やがて人気のない薄暗い場所まで辿り着くと、ふいに立ち止まってあたしの方を振り向いた。



「…妃由」