ふいに芽衣が、呟くように言った。
…意外、って…?
「あたし、拓海くんとは一年の時同じクラスだったんだけど、誰に対しても優しいイメージしかなかったからさ」
「!」
「愛情表現だとしても、“ブス”とか何かいろいろ言いまくっている拓海くんって……いや想像つかなかったよ」
芽衣はそう言うと、野菜を切りながら苦笑いを浮かべる。
…あ、それ、前に似たようなことを直樹にも言われた。
あんまりそこまで考えてはいなかったけど、不思議だよなぁ。
拓海くん、他の人達には男女関係なく優しくて、あたしにはあんなに厳しくて酷いなんて。
最初からずっとそうだったけど…何でだろ。
ってか、どっちが本当の拓海くんなのかな。
そう思って、
「…あたしにも優しかったらいいのに」
思わずあたしがそう呟いたら、次の瞬間ふいにリビングのドアが開いた。
入ってきたのは、さっきまで部屋にこもっていた拓海くんと直樹で。
直樹が、手に花火セットを持って言った。
「ね、二人とも。夜花火しない?」