あたしは独りそう思うと、隣で砂を蹴る拓海くんに言った。



「…酷い」

「は?」

「直樹は褒めてくれたのに。彼氏の拓海くんはずっと不機嫌なんて」

「…」

「そりゃああたし、待たせたかもしんないけどさ」



…そこまで怒ることないでしょ。


しかしそう言葉を続けようとしたら、それを遮るように拓海くんが言う。



「うるせーブス」

「!!」

「似合う似合わないは、言わなくても普通わかるだろ」



拓海くんはそう言うと、ふいに冷たく顔を背けて海の水に足を入れた。



「そんなのっ…!」



…あたし、エスパーじゃあるまいし。

わかるわけないじゃん。



でも、あたしがそう文句を言おうとしたら…




「!!ぶっ、」




その時突然、何故か拓海くんがあたしの顔をめがけて水をぶっかけてきた。



「な、何すんの!」



…だけどその行為にムカついて拓海くんに近づくと、拓海くんの頬は心なしか少し赤く染まっていて…



「…可愛いとか似合うとか…言えるわけないだろ」



彼が小さくそう呟いた言葉を、あたしは知る由もない───…。